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理系×文系夫婦のマイル日記

マイレージ、カード、ポイント、使い方、旅の情報を書いていきます。

海外、飛行機でのネットは快適になるのか。SBが衛星ネット会社のOneWebに出資。

ソフトバンクが衛星インターネットベンチャーのOneWebに10億ドル出資。

 ソフトバンクが、世界すべてでブロードバンドの提供を目指す、次世代の衛星通信の企業OneWebに対し、10億ドル(約1180億円)を出資すると発表した。

 このとてつもない金額の、ベンチャー投資ニュースが世界中を駆け巡った。

 ニュースサイトなどの見方は、媒体によってさまざま。経済紙はソフトバンクグループが、通信キャリアではなく本格的に投資ファンドとして活動を始めたと報じた。一方、テック系のメディアは、通信キャリアとしてのソフトバンクと、ARMの買収も含めてIoTで覇権を握る事に動き始めた事を報じた。

 どちらも正しく、見方の問題だ。私は株にもテック系にも航空宇宙にも興味があるので、震えた。嬉しい。でも、株とテック系記事と航空宇宙は単なるフリークなので、嬉しい以外の感想はかけない。

 

 ところが、ここはマイラーブログで、サラリーマンである私の本業は通信。この二つなら書けそうなことがありそうだ。OneWebが実現しようとする世界を、通信の観点からマイラー向けとして記事を書いてみよう。

OneWebとは?

  OneWebはグレッグ・ワイラー氏が立ち上げた新興のスタートアップ。2018年までに数百の衛星を打ち上げ、世界中にブロードバンドのインターネットを提供することを目標としている起業。Facebook、Google、SpaceXも同様の目標を立てて4社で競っている。

 何故、既にとてつもなく高速な光ファイバーやLTEがあるのに、そんなに壮大な面倒な事をするのか。簡単に言えば、「光ファイバーのないエリア」のためのインフラを作ることが目的だ。ちなみにLTEは無線だが、基地局から先は結局光ファイバーを通る。

 私が個人的に仕事で日々苦労している事なのだが、意外と光ファイバーがないところは多い。LTEも7GB制限があるし、そもそも圏外のエリアがまだまだ多い。光ファイバーのない所で安定的に10Mbpsの通信を確保しようと思うとどうすればいいのか。実はどうしようもないのだ・・・・。

 もの凄くお金を掛けた、最新鋭のクラウドやAIを駆使したカッコいいシステムを組んで、東京の本社や大阪の支社は最先端のビジネス環境を整えたが、地方の工場は接続方法が64KbpsのDAしかなく、どうすんねんこれ・・・・となることは珍しくない。と、いうか100拠点以上の規模のプロジェクトなら1拠点や2拠点はかならずある話だ。2016年現在の日本でもだ。

 光ファイバーの敷設をするのは、一般の人が思っているより、はるかに高いお金がかかる。たった一本、道路の下を通って、ビルに入れようとするだけで1000万円を超える事すら珍しくない。だから一般家庭に入れる光ファイバーは1本のケーブルに4芯封入し、さらにそれを32人でシェアし、2年や3年の縛りをかけることで投資を回収できるようにしている。

 日本でもその状況で、べらぼうにお金のかかる光ファイバーを途上国が整備することは不可能だ。整備できないエリアは、世界全体でみると整備できているエリアよりはるかに広い。

 そのエリアにブロードバンドインターネットを提供する壮大な構想がOneWebだ。

 そして、光ファイバーの整備されていないエリアとは、移動する物体も含まれる。そう。船と飛行機だ。

OneWebはどういう仕組みなのか。

 OneWebを知る前に知っておいたほうがいい会社が一つある。O3bnetworksだ。OneWebと同じグレッグ・ワイラー氏が立ち上げた、衛星ネット企業。高度8000キロメートルに16機の衛星を打ち上げ、太平洋の島々や、クルーズ船などにインターネットを提供している。

 つまり、グレッグ・ワイラー氏は何個も会社を起業する、シリアルアントプレナーなのだが、O3bnetworksじゃ何がダメだったのか?

 それは、遅延値と回線収容数である。高度8000キロメートルということは、一番最短ルートを通っても1万6000キロメートル。長い場合は2万キロ等なる往復距離があると、どうしても遅延値が多くなる。回線速度は速くてもデーターが届かなくなるのだ。

 また、全世界を16機の基地局で運用するとすると、どうしても1回線あたりの速度は遅くなってしまう。また、遠くから通信を行おうとすると、衛星も強力で巨大なものとなり、数を増やすには投資と利益が見合わない。

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 O3b用の衛星(800kg程度)

 

 だから、O3bnetworksと別の方法の衛星ネットワークが必要だった。

 そこで、グレッグ・ワイラー氏が立ち上げたのがOneWebである。Onewebとo3bnetworksの違いを表にしてみよう。

 O3bnetworksoneweb
衛星数 16機 648機のNGSO衛星
衛星重量 800kg 125-130kg
軌道 8,000km(MEO軌道) 1,200km(LEO軌道)
使用バンド帯域 Ka帯 Ku、Ka帯
ビットレート 2.1Gbps 8Gbps
ping値 130 ミリ秒 30 ミリ秒
衛星製造 Thales Alenia Space Airbus Defense Space
衛星1機40~50万ドル
仏で10機、米で残り
打ち上げ 仏Arianespace 仏Arianespace
Soyuz: 21機
英Virgin Galactic
Launcher One: 39機

 大きな違いは衛星の数だ。O3bの16機に対して、Onewebは648機。圧倒的な違いである。また軌道も8000キロメートルと1200キロメートル。

 毎年、指数関数的に通信量が増える現代だから、これだけあれば十分とは言わないが、8Gbpsのスループットを持った衛星が648機あるということは、地上には5Tbpsの帯域が確保できる。2010年にKDDIとかGoogleが敷設した太平洋ケーブルが、4.8Tbpsだからだいたい同じくらいです。現在は同じルートで60Tbpsのケーブルが敷設されていますが、海底ケーブルを置き換えるわけではないので十分。

 これだけ違うと遅延値も圧倒的に違う。130ミリ秒と30ミリ秒だ。30ミリ秒なら国内のネットなら少し遅いが、海外通信と考えれば十分だ。

 衛星が近いことで出力も弱くて済むので、地上局側も非常に小さくできる。Onewebはこんなポータブル型の地上局で通信ができると説明している。

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 また、Kuバンドに対応することも非常に大きい。

 ANA Wi-Fi ServiceやJAL Sky Wi-Fiなど現在多くの飛行機で機内インターネットサービスが利用できるが、これはアメリカの衛星ネット会社Gogo Inc.が提供する衛星インターネット回線を利用している。

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 このGogoが採用しているのも、Kuバンドだ。Gogoは3万6000キロメートル上空の静止衛星を使うため、OneWebと技術が全くの別物ではあるが、実績がある帯域というのは非常に重要である。

 Gogoが問題なく今後も運用し続けられるのであれば、OnewebのKuバンド通信も非常に期待できるだろう。

 現在のGogoは3万6000キロメートル先の衛星と70Mbpsで通信してるのだ。たった高度1200キロメートル先の衛星と同じバンドで通信する事を考えたら、どれだけ高速になるかは説明するまでもないだろう。

 また、Onewebは衛星の数も非常に多いので、キャリアアグリゲーションのような多数の衛星相手に同時に通信をして、帯域を確保するといった方法も技術的にはできるだろう。

 そうすれば、機内でyoutubeを見ても全くストレスのないインターネット環境を実現できるかもしれない。

OneWebは何が凄くてソフトバンクに認められたのか。

 ここまでOnewebの特徴を書いてきた。

 Kuバンドの実績や、通信の相性の良さやキューブサットを始めとする、超小型人工衛星ブームからきた、小型衛星を大量に打ち上げて、有効に運用すると言うビジネスモデル、シリアルアントプレナーであるグレッグ・ワイラー氏自体の魅力。

 どれも素晴らしい特徴だ。

 しかし、構想だけなら今までも無かったわけじゃなかったし、実はスペースXのイーロン・マスク氏や、ボーイング社、中国なども同様の計画を構想している。

 なのになぜ、OneWebに10億ドルも出資したのか。

 実はここの謎がソフトバンクと言うか、孫正義氏が大好きな物に絡んできて、出資した理由が腹落ちする内容なのだ。

 それは、「電波利権」である。

 電波は公共のもので、公平に使うべきものだが、日本もアメリカもEUも実情は早い者勝ちのような利権となっている。

 真っ先に利用方法を見つけ、申請した者には比較的速く許可が降りるが、後から申請した者には複雑で中々受理されない申請プロセスが存在し、そう簡単にはビジネスはできない。テレビ局や携帯電話会社の顔ぶれがずーっと変わらないのはそう言う事だ。

 だから、スペースXの衛星通信ビジネスは、ビジネスモデルとしては素晴らしく、打ち上げのためのロケットも自社開発で実現性が高そうなのに、電波の利権を持ってないことから、実現しないだろうと言われている。

 ボーイングの衛星通信ビジネスは、今まで誰も使っていなかったバンドで通信をする計画で、確かに認可は早かったが、誰も使ってなかった故に、実績も製品もなく、1から開発してて、実用化はまだまだ先のようだ。

 では、なぜOneWebは今まで使っていた人が居て、実績もあるKuバンドを使用するのに、電波利権はクリアされているのか。

 話は簡単。電波を買ったのだ。

 テレデシック計画と言うのがあった。これはマイクロソフトのビル・ゲイツ氏がワンウェブと全く同じような内容で立ち上げた、数百機による衛星インターネット計画。この計画は失敗したが、この電波権利をワンウェブは買ったのだ。だから、審査に捕らわれることなく、電波を使うことができる。

 そして、そのOnewebの権利をソフトバンクは出資と言う形で買ったのだ。これで宇宙とのKuバンドでの通信をソフトバンクが行うことができる。これがソフトバンクが出資した理由である。

 完全にシステムが完成する2030年頃。ソフトバンクは全世界のネットワークとCPUを支配する会社になってるのかもしれない。